革小物開発日記(LP用)
高級ブランドレザーのbuttero(ブッテーロ)を使用した革小物シリーズから新しく登場した名刺入れ、IDケース、キーホルダー、PCの4型。シンプルかつ機能的な革小物はどのように作られたのか?
今回は製品の特徴やこだわりについて、そしてサンプルから完成までの過程も交えてご紹介。
■ デザイン
まずこのブッテーロシリーズをデザインするにあたって、ワンダーバゲージとしての考えをどのような形で伝えるべきかを考えた。数ある革小物の中で、使用して頂くお客様にどのような価値を提供できるのか。ただブッテーロの革を使った特徴のない革小物だと、自分たちが作る意味は無いと考えている。
結果私達が出した答えは、「正統性の保持と形式からの脱却」をコンセプトにしたシリーズを作ること。
これは革小物として、ビジネスの場にふさわしい佇まいを備えていること(正統性)を前提に、従来にとらわれすぎない仕立てや設計を行い、そこに新しい価値を見出すことを目指した(形式からの脱却)。
ビジネスで使用される革小物の多くはカッチリしたものが多く、型紙も垂直水平での設計となっている。それに対してこのブッテーロシリーズはR(カーブ)を用い、全体として柔らかい印象を持たせている。これはワンダーバゲージのバッグに見られるライン使いに共通する考え方となっている。
また、革の端面処理には「ヘリ返し」という外側の革を内側に巻き込み切断面を覆う方法を取り入れ、シンプルな造形の中において、端面には多層のハイライトが走るように設計されている。
そして外観にはできるかぎりボタンをすべて見えないように設計しているのも特徴となっている。使い込むことによって浮かび上がるボタンは経年変化を味わえる楽しみを含んでいる。
これらの仕立てや設計を取り入れながらも、ビジネスとしての正統性を保持できているのは各アイテムの機能はベーシックに抑えていること、そして使用している素材「ブッテーロ」による影響が大きい。
■ 名刺入れ
ラウンドしたフラップが目を引く名刺入れは、「ササマチ」と呼ばれる先につれて細くなる構造のマチを採用。
十分な収納量を確保しつつ、閉じた際にマチが内側に入り込むため収納量が多くなっても分厚くなりすぎずスマートな見た目を崩さない。
ブッテーロの質感をより堪能してもらえるよう、ボタン頭は革の内側に設置。使い込むにつれてボタンの形状が銀面に徐々に浮かび上がり、使い込む楽しさを与えてくれる。また、外側には切れ目や継ぎ目など極力余計な装飾が出ないように設計。
革の良さを生かした設計
ポケットを取り付ける場合、多くは下の画像のように外側からポケット部分の革を縫製する方法がとられてるが、その場合外側に継ぎ目が表れる。
前述したように、革の手触りや見た目でノイズになる要素は極力省きたかったため、ポケットになる革は内側から縫製するように設計。
実は下部分は縫製していないため、ポケットというより正しくは仕切りになっている。
自分と相手の名刺を分別できる機能は持たせつつ、革を十分に堪能できる無駄のない美しい外見に仕上がった。
■IDケース
オフィスでの名脇役になる縦型IDケース。
社員証・ICカード・名刺が個別に収納できるよう計3つのスリットを配置。
キャッシュレス派の方はこれとスマホだけで完結できるので、仕事の休憩時間には手荷物を抑えた状態での外出が可能。
窓部分はPVC素材などのクリアフィルムはあえて使用せず、革のみで設計。
素材にもよるがPVCは革と比べると劣化した時の表情が美しくないとデザイナーが判断した。
そのため窓部分はカードが落下しないよう数ミリ単位でサイズを調整。
Dカン取り付け箇所の仕様と金具の選定
サンプルを進める上で、最も気を配った箇所がDカン取り付け部の形状と金具の選定。
シンプルな仕様だからこそ、細かな調整で製品の雰囲気が大きくと変わるポイントとなる。
1stサンプルのように垂直水平でなく、なだらかなアール(曲線)をつけ、幅も数ミリ広げることでシリーズ全体のラインの整合性とDカンのグラつきを軽減している。
金具は同じものでも、取り付け部の形で全く印象が変わることが分かる。
こだわって選定された金具
共通意匠のラウンドの形状に調和するような、アイコニックな存在になるDカンを求め、数種類の中から金具を選定。
オリジナルの型を作成する案まで出ていたが、金具メーカーと議論を重ねるうちに、理想の金具が見つかった。
丸い棒状でできたDカンをプレス加工することで、求めていたラウンドの曲線に近い存在感のある金具。
この金具はキーホルダーにも採用している。
■ キーホルダー
革を2枚貼り合わせ、小物ながら重厚感を感じられる仕様。
ループはスナップボタンで脱着が可能、玄関先のフックに引っ掛けたり、カバンの持ち手に通したり、ベルトへ取り付けたりと自由な使い方ができる。
財布や名刺ケースと意匠を統一させ、ボタンの金具がみえないよう両端を外側に折り返して縫製。
経年変化によりボタン部分の凸が浮き出る仕様なので、使い込むほどに深まる風合いを楽しめる。
仕様の変遷
1stサンプルは一枚の革で作成し、両端を内側に折り返し、その部分にボタンを取り付けている。しかし画像からも分かるように、この状態での仕上がりには納得せず、本体を1枚革から2枚の貼り合わせに変更することにした。
このキーホルダーの折り返し部分は最大4枚の革を縫い合わせており、ブッテーロの高級感と重厚さを贅沢に感じられるキーアクセサリーとなった。
ただし、厚みがあり過ぎるとミシンで縫製ができないため、縫製可能な厚みと手に持った際の充足感のバランスを探りながら設計。
また、鍵を取り付けるDカンはIDケースとサイズ違いの同型を使用。
大ぶりなDカンを組み合わせることで、シンプルながら目を引かれるアイコニックな印象に仕上げている。
■ PCケース
両面にブッテーロレザーを贅沢に使用したシンプルなPCスリーブ。14inch macbookまでの収納を想定。
使用面積の大きさから、表面には天然皮革の特徴であるトラが見られる。
ブッテーロシリーズの中で最も使用面積が大きいので、上質な革の匂いや手触りを最大限味わうことができる製品。
片側の段差は上まで縫製せず、スリットになっているため、PCを収納したまま充電に接続が可能。
出先から帰宅後、PCスリーブのまま充電し、翌日そのままカバンに収納、と一連の動作がスムーズに行える。
内張にはデバイスを保護する人工スエードを配置。
使い込むことで天口部分の革が柔らかくなり、スリットにより外側に反れてしまうことを防止するため、内張の天口からスリット下にかけて二重にレザーを当てて補強。
長く使い続けられるつくり
素材がいくら丈夫でも、作り方や縫製方法が脆弱では本末転倒です。
そのため使い続けるほどに最もダメージが蓄積されるであろう開閉部の両端には、補強のため縫製にプラスしてカシメを打刻。
この補強方法については、革当てや手かがりなど様々な案で検討を行った。
強度はもちろん、もし補強が外れてしまった場合には、カシメが最も修理対応がしやすい利点があったため、最終的にカシメが最適と判断。
長く使い続けることを前提とした強度の高い作りを採用している。
商品ページはこちら
細部まで多くのこだわりを持って設計されたブッテーロシリーズの革小物。
素材の良さを生かしながら機能性も兼ね備えた上質な革小物は、使い手の生活に寄り添い、徐々に深まる革の表情を味わう楽しみがあります。
自分だけの使い方、育て方により変わる表情は、時を経るごとに一層愛着を感じられるかけがえのない存在になってくれるはず。
年齢・性別を問わないシンプルな革小物はご自身用にはもちろん、大切な方へのギフトにも最適なシリーズとなっている。