初めは工場探しから
二年以上前から構想は始まっていました。以前よりお客様から「レザーのバッグはつくらないんですか?」のお声がけはいただいておりましたが、我々の生産背景はナイロンをベースとした工場でした。鞄と言っても革とナイロンでは作る工程や下処理に大きな違いがあるため、我々とつながりある工場では革の鞄を作るのは不可能でした。
まず私たちは革鞄をつく上げてくれる工場を探しました。そこで彼らの背景や技術を理解した上で、私たちの理想を重ねたバッグをデザインしていきました。
困難を極めた革の選定
デザインを行う上で重要なのは革素材の選定です。革も鞣し方や、表面の仕上げによって様々な物性があります。鞄に合う素材もあれば、靴に合う素材もあります。
私たちが革に求めたものは、とにかく丈夫であること、そして使い込んだ姿が美しいこと。
上質な革という時点で、ある意味当たり前ではあるのですが、それでもその言葉の外にある私自身の直感としての選定眼を通すとなかなか納得できる革に出会えませんでした。国内産のタンナーさんをいくつか回り、良い革だと思い試作をつくるのですが、鞄となった時にはやはりこれだという想いにはなかなかなりませんでした。
いくつかのサンプルを重ね、再びタンナー、革問屋を回りながら、私たちが選んだ革は”栃木レザー”でした。栃木レザーはすでに多くの方に知られている日本でも有数のブランドレザーです。当然始まりにも栃木レザーは候補に挙がっていたのですが、まだ見ぬ革を探そうと私たちは他を当たったのですが、結局我々が求めていた条件を満たしてくれたのはこの革でした。
栃木レザーはフルベジタブルタンニンレザーで、ドラム式とは違うピット槽という古くからの鞣し製法を採用しているこの革は、今では数少ない製法となっています。ピット槽はプールに革を浸してタンニンを鞣し含浸させていくので、革の繊維層がしっかりと詰まっており、硬い革に仕上がります。クロムレザーに比べ重量はありますが、伸びにくく、丈夫な革となっています。そして植物性のタンニンで鞣された革は使い込むほどに経年変化を伴います。我々が求めていた条件に見事にマッチしている革です。
そして栃木レザーはブランド名であり、その中でも様々な種類が存在しています。私たちがその中から選んだのは、オイルを十分にしみこませたバケッタ製法を採用した”オイルバケッタ”です。フルベジタブルタンニンでありがなら、オイルをしみこませることでしなやかさを保持します。表面の仕上げは素上げに近く、ダイレクトに革の表情を味わうことが出来ます。
頑丈でいて、美しい。
私たちが求める条件に見事にあった栃木レザーの「オイルバゲッタ」となりました。
素材を活かした設計
私たちがデザインする上で大事にしている、ビジネスシーンでも硬くなりすぎず、それでいて普遍的な美しさを持つこと。そこに革という自然の産物を十分に味わえるようなバッグを目指しました。
私たちはこの革を活かすために、極力シンプルで、無駄のないデザインを施しています。前胴、背胴はポケットをハンドルの根革に配置し、革のつなぎ目であるハギを出さないように全面一枚の贅沢な仕上げ。造詣は革の表情を豊かに見せるため、マチとの合わせ目は平面ではなく立体的にみせるようにうち縫い仕上げとなっています。ハンドルも同一素材としておりどこを切り取っても革の良さを味わえるようになっています。外装に使われているパーツは真鍮製なのでこのパーツも使い込むほど表情が変化していきます。
収納力ある内容量